ビールやサワーは、なんとなく選べます。ワインも、赤か白か、甘めか辛めかくらいなら少しイメージできますよね。
でも日本酒になると、急にむずかしく感じませんか。
純米、吟醸、大吟醸、辛口、生酒。ラベルにはいろいろ書いてあるけれど、結局どれを選べばいいのか分からない。一度飲んで、ちょっと苦手だった。自分で買うには、まだ早い気がする。そんなふうに感じている方は、きっと少なくないと思います。
でも本当は、日本酒って難しい知識がなくても楽しめるお酒なんです。
大切なのは、最初から正解を当てようとしないこと。そして「どんな味か」ではなく、どんな時間に飲みたいかを想像して選ぶことだと思います。
仕事がすこし落ち着いた週末の夜。友達と集まる家飲み。映画を見ながら、冷やしたグラスで少しだけ飲む時間。一日の終わりに、自分をゆるめる一杯。
日本酒は、そんな日常のなかにも自然に置けるお酒です。
今回は、岩手県一関市の蔵元・世嬉の一酒造で聞いたお話をもとに、初心者でも選びやすい「はじめての一杯」の見つけ方をご紹介します。
1. 一杯で決めなくていい
日本酒を一度飲んで、「ちょっと苦手かも」と思ったことがある方もいるかもしれません。
でも、それは日本酒そのものが苦手だったのではなく、たまたまその一杯が自分に合っていなかっただけ、ということがよくあります。
日本酒には、かなり幅があるんです。すっきりしたもの。フルーティーなもの。お米の旨味をしっかり感じるもの。シュワッと軽やかなスパークリングタイプ。同じ「日本酒」と呼ばれていても、印象はかなり違います。
温度によっても味わいは変わります。よく冷やすとすっきり感じやすくなりますし、少し温度が上がると香りや旨味がふくらみます。蔵のスタッフも「お手頃なお酒は熱燗にして匂いを飛ばす。いいお酒は冷やして香りを楽しむ」と教えてくれました。また、開栓してから時間が経っていたり、保管状態がよくなかったりすると、本来の美味しさが伝わりにくいこともあります。
最初に飲んだ一杯だけで「自分には合わない」と決めてしまうのは、少しもったいないです。
はじめて自分で日本酒を選ぶなら、まずは親しみやすい入口から試してみてください。それくらい気軽で大丈夫です。
2. 辛口が正解とは限らない
日本酒を選ぶとき、よく出てくる言葉が「辛口」ですよね。なんとなく、甘くなくて飲みやすそうとか、大人っぽい味がしそうとか思うかもしれません。
でも、日本酒の辛口はすこし複雑です。
辛口と書いてあっても、人によっては甘く感じることがあります。逆に、甘めと言われるお酒でも、酸味や後味のキレがあるとすっきり感じることもある。日本酒の味は、糖分だけで決まるものではないんです。香り、酸味、旨味、苦み、アルコール感、後味のキレ、飲む温度。こうした要素が重なって「甘い」「辛い」「すっきり」と感じます。
実際、世嬉の一酒造のスタッフも、「甘口ですよ」と言ってお酒を注いだ直後にお客様から「これ、辛いですね」と返されることがあるそうです。同じお酒でも、感じ方は人によってかなり違う。だから結局のところ、辛口・甘口のラベルだけで選ぶのは、あんまり頼りにならないんですよね。
それよりも、すっきり飲みたい、フルーティな香りがある方がいい、食事と一緒に飲みたい、ワインみたいに楽しめるものがいい。そんなふうに、自分の飲みたい雰囲気を言葉にしてみる方が、ずっと選びやすくなります。
3. 純米、吟醸、大吟醸の話
日本酒のラベルを見ると、「純米」「吟醸」「大吟醸」「純米吟醸」「純米大吟醸」といった言葉が並んでいます。最初はむずかしく見えますが、ポイントは2つだけです。
ひとつは、お米をどれくらい磨いているか。酒米は一粒ずつ表面を削って使います。表面には澱粉や雑味のもとになる成分があって、削れば削るほど中心の甘みのある部分だけが残ります。だから削りが深いほど、フルーティーで飲みやすくなる。ただ、その分たくさんお米を使うので値段も上がります。
もうひとつは、醸造アルコールを加えているかどうか。ラベルに「純米」とついていれば、米・米麹・水だけで造られたお酒です。純米がついていなければ、醸造アルコールが加えられています。蔵元いわく「体が醸造アルコールを受け付けないという方もいらっしゃる」とのこと。世嬉の一酒造は基本的に純米酒シリーズしか造っていないので、すべてお米と水だけで出来たお酒ですね。
純米酒
削りがやや粗めで、お米の旨味やコクをしっかり感じられるタイプです。食事と一緒に楽しみやすく、日本酒好きの方が普段飲みに選ぶことも多いお酒です。私たちは、辛口が好きな方にはまず純米酒をおすすめしています。
純米吟醸酒
お米を50%ほど磨いて造るので、雑味が減って香りがやわらかくなります。フルーティで入りやすく、初心者にもオススメしやすいタイプ。世嬉の一酒造でも、迷ったらまず純米吟醸、というのが定番のご案内です。
純米大吟醸酒
お米を60%以上磨いて、40%だけの中心部分で造るお酒です。雑味がほとんどなく、香りが華やかで上品ですね。特別感があるので、すこし贅沢したい夜や贈りものにも向いています。ただ、その分お米をたくさん使うので価格は上がります。
純米大吟醸がかならず一番おいしいというわけではありません。好みや飲む場面によって合うものは変わります。飲みやすさなら純米吟醸、食事となら純米酒、ワイン感覚ならスパークリング。名前のむずかしさに構えすぎないのが大事です。
ちなみに、日本酒には「生酒」と「火入れ」の違いもあります。生酒は火入れ(加熱処理)をしていないお酒で、香りがより華やかなのが特徴です。ただし要冷蔵で、あたたかいところに置くと味が変わってしまうので、初心者の方はまず火入れ済みのものから試すのがいいかもしれません。
4. まずは純米吟醸から
私たち世嬉の一酒造の直売所では日本酒初心者にはどんなお酒をすすめるかよく聞かれます。社長もスタッフも口を揃えて挙げたのが純米吟醸でした。「フルーティーで飲みやすいので、万人受けしますね」と。実際、売店でも一番人気の商品です。
世嬉の一酒造の純米吟醸は、岩手県産の酒造好適米「吟ぎんが」を使ったお酒です。この吟ぎんがは岩手県のオリジナル品種で、県外では一切栽培されていません。つまり、岩手でしか造れない日本酒なんですね。
フルーティで口あたりがよく、お食事にも合わせやすい。価格帯も3,000円前後で手に取りやすいです。日本酒にくわしくない方にとって、最初から個性的すぎるものやどっしり重いものは少しハードルが高いかもしれませんが、純米吟醸なら香りと飲み心地のバランスが取りやすいと思います。
ちなみに世嬉の一酒造の仕込み水は、やわらかい軟水です。だから全体的に口あたりがやさしくて、「辛口寄り」と分類されるお酒でもそこまでキツくありません。冷やして飲むと、そのすっきり感がさらに際立ちますよ。
5. スパークリングという入口も
もうひとつ、初心者におすすめしやすいのがスパークリング日本酒です。
日本酒というと、お猪口で静かに飲むイメージがあるかもしれません。でも、スパークリング日本酒はすこし違います。よく冷やして、グラスに注ぐ。自然な泡が立って、すっきりした飲み口で、シャンパンのような感覚で楽しめます。
世嬉の一酒造のスパークリングは、アルコール度数が15度前後と日本酒のなかでは低め。通常の純米酒が16度あたりなので、すこし軽やかに飲めます。しかも純米のスパークリング日本酒は市場でもあまり見かけないので、ちょっとした珍しさもありますね。
そしてスパークリングは若い方に人気があるように思います。ラベルの華やかさから女性向けに見られることもあるけれど、実際には男性のリピーターも多いです。甘さが控えめということもあると思います。
友達との家飲み。タコパや鍋パ。映画を見ながらの夜。ベランダに出て一杯。コンビニのカットフルーツやスイーツと合わせる時間。フルーツ系だったらスパークリングが一番合うと思います。夏祭りや花火の日にもいいかもしれません。いつものビールやサワーとは違うけれど、気取りすぎない。ちょっと珍しくて、でもスルスルと飲めるお酒です。
6. 大きい瓶でなくていい
日本酒を買うとき、720mlの瓶を見るとすこし迷うかもしれません。飲み切れるかな。口に合わなかったらどうしよう。冷蔵庫に入るかな、と。
そういう方には、300mlの小瓶や、少量の飲み比べセットがあります。遠方から旅行で蔵元を訪れる方も、荷物にならない300mlを選ぶことが多いです。
はじめての日本酒選びで大切なのは、最初から完璧な一本を当てることではありません。少しずつ試して、「自分はフルーティな香りが好きかも」「スパークリングの方が入りやすいな」「意外とお米の旨味があるタイプも好きだ」と、自分の好みを見つけていくことです。
日本酒は、飲みながら少しずつ分かっていくお酒です。だから最初は、小さく始めていいんです。むしろ、その方が楽しいと思います。
7. 場面で選ぶ日本酒
味の説明だけを見るより、「どんな場面で飲みたいか」を考えると、ぐっと選びやすくなります。
仕事終わりの一杯
新社会人になってすこし経つと、仕事にも慣れてくるけれど、同時に疲れもたまってくる頃ですよね。そんな日の夜に、冷やした日本酒をすこしだけグラスに注いで、ゆっくり飲む。たくさん飲むためではなく、今日をちゃんと終えるための一杯です。純米吟醸や300mlの純米大吟醸が向いています。
友達との家飲みに
友達と集まるとき、いつものビールや缶チューハイに加えて、スパークリング日本酒があるとすこし楽しくなります。「これ、日本酒なんだ」という会話が生まれますし、グラスに注いで乾杯するだけで、すこし特別感が出ます。でも堅苦しくはない。タコパ、鍋、唐揚げ、チーズ、フルーツ。意外と身近な食べ物にも合わせやすいですよ。
週末に好みを探す
週末の夜に、少しずつ飲みくらべてみるのもいいですね。純米吟醸とスパークリング。あるいは純米酒と純米大吟醸。飲みくらべると、自分の好みが見えてきます。香りがある方が好きなのか、すっきりしたほうが好きなのか、お米の旨味がある方が落ち着くのか。日本酒は、知識から入るより体験から入るほうが好きになりやすいお酒だと思います。
食事と一緒に
日本酒は和食だけのものではありません。焼き魚やお刺身はもちろん、唐揚げ、チーズ、鍋、コンビニ惣菜にも合わせて楽しめます。純米酒や純米吟醸はお食事と一緒に合わせやすいタイプです。「日本酒を飲む」というより、「きょうの食事を少し楽しくする」くらいの感覚で選ぶと、気軽に始められますよ。
8. コンビニおつまみと合う
「ちゃんとした和食を作らなきゃ」と身構える必要はありません。帰り道のコンビニで買えるおつまみが、驚くほど日本酒によく合うんです。
スパークリング日本酒には、ファミチキやポテトチップス。泡が油をすっきり流してくれて、休日のごほうび感が増します。コンビニのカットフルーツやスイーツとの組み合わせも、とてもおいしいです。
香りの良い純米大吟醸には、生ハムやカマンベールチーズがおすすめです。塩気がお酒の香りと甘みを引き締めてくれて、ちょっと贅沢な味わいになります。世嬉の一酒造の純米吟醸はケーキにも使われているお酒なので、甘い系のおつまみとも相性がいいですよ。
香りがやさしい純米吟醸なら、だし巻き卵やカニカマ、サラダチキンといった淡白なもの。お互いのやさしい旨味が自然に重なり合って、ホッと落ち着く組み合わせになります。
「何に合うか?」というのは、すごく難しい質問です。人の味覚ってわからないので、まさに正解はないんです。好きなおつまみと一緒に、まずは気軽に開けてみてください。
9. 世嬉の一酒造のおすすめ
日本酒初心者には、飲みやすさ、試しやすさ、場面の想像しやすさが大切です。世嬉の一酒造の商品から、はじめての方に向いているものを選びました。なお、世嬉の一酒造のお酒はなかなか東京や関東では手に入りません。岩手の蔵元から直接届く、日常がちょっと嬉しくなるお酒です。
ほかにも、すこし特別な気分を小さく試せるお試し 純米大吟醸酒 世嬉の一 300ml(2,400円)や、日々の食卓に寄り添う特別純米酒 世嬉の一 720ml(2,200円)など、気分や場面に合わせた入口をご用意しています。
気軽に試していい
日本酒は、くわしくなってから飲むものではありません。むしろ、飲んでみることですこしずつ分かっていくお酒です。
フルーティで口あたりのいい純米吟醸。グラスで軽やかに楽しめるスパークリング日本酒。少しずつ試せる300ml。自分の好みを探せるお試しセット。そんな入口から始めれば、日本酒はもっと身近になります。
そういえばスタッフの1人がこんなことを言っていました。「まずは片足突っ込んでみて。飲み慣れていけば好みが必ず出てくるので、そこから日本酒を好きになってもらえればいいなと思います」と。
岩手・一関の蔵元、世嬉の一酒造から届く一杯。それはただのお酒というより、いつもの時間をすこし深くしてくれる小さな体験です。
仕事終わりに。週末の夜に。友達との家飲みに。自分へのごほうびに。
はじめての日本酒は、むずかしく考えず、気軽に。まずは、あなたの時間に合う一杯を選んでみてください。
世嬉の一酒造 公式Instagram
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